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Japanische Klassiker mit Furigana

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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

Lesen Sie 左近の怒り (さこんのいかり) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.454 Zeichen · 95 Bildschirme

Aozora Bunko

葉子がただの女事務員でタコスケがただの給仕ならこうはならなかったかも知れないが、二人が重役で、平社員はキレイサッパリみんな逃げたというのが気に入った。ちょうどその本のでき上るころまではヒマな身体だから、この哀れ奇怪な重役どもに一ピの力をかしてやろうかという気持になった。

「そうですね。ちょうどヒマだから、その本ができるまで、つきあいましょうか」

「ありがたい!」

タコスケが今度は本気によろこんで、とびあがって叫んだ。

「毎晩の宿直にボク音をあげたよ。今夜からウチへ帰って手足をのばして寝られるよ」

「キミは今夜から店へ泊りこんでくれ。仕事は明日からだ。夏川左近氏の入社を祝い、晩メシはスキ焼といこう」

二人の男が歓声を発してそれぞれ仕度に駈け去ったあと、葉子が云った。

「バクダン投げこまれても知らないわよ」

「そんなに狙われてますか」

「社員がみんなやめるほどですものタダゴトじゃアないわ」

「ボクが入社して迷惑なんですか」

「迷惑のはず、ないわ。ぶん殴られてカタワにならないでね」

淡い愛情のこもった目で左近を睨んで、葉子も去った。まんざら迷惑でもないらしい。監視艇の機関銃の目をくぐって密輸の荒波をきりぬけてきた左近は街のアンチャンのバクダンぐらい浜のアブと同じぐらいにしか珍しくもなかった。