Japanische Klassiker mit Furigana
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パリさい
巴里祭
岡本 かの子
Lesen Sie 巴里祭 (パリさい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.324 Zeichen · 60 Bildschirme
その夜新吉の膝に加えられたカテリイヌの柔い重圧が新吉のメランコリーに深く泌み込んで仕舞ったのを新吉はいまいましく思いながら、まぼろしのようにその夜教授の部屋の窓から眺めた月光を含む靄の中からサンミッシェル街の灯影を思い泛べて、秋の深まり行く巴里の巷を幸福と懊悩に乱れ乍らさまよい歩いた。斯うしてカテリイヌと二度会う機会を待っているうちに新吉は思いがけなく遊び女のリサと逢って仕舞った。
新吉は寝椅子の上でおみちの手紙を状袋にしまった。それから手を伸して貴金属商アンドレの店頭装飾写真の入っている額椽のうしろへ挟んだ。十年以上も無視していたおみちが急に蘇って来たのはどうしたわけだろうか。たった二三行の手紙の文句で日本へ帰る思いが燃え立ったのはどうしたわけだろうか。おみちのあのおさな顔が其のまゝでちらほら白髪が額にほつれて来た。此の報告が巴里の生活で情感を磨き減らして無感覚のまゝ冴え返っている新吉の心に可なりのさびしみを呼び起した。おみちがたゞ年老いて行くことだけでは憐れとも思わない。あの眼も口も篦で一すくいずつ平たい丸みから土をすくっただけで出来上っている永遠に滑らかな人形のような顔。