Japanische Klassiker mit Furigana
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パリさい
巴里祭
岡本 かの子
Lesen Sie 巴里祭 (パリさい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.324 Zeichen · 60 Bildschirme
それでね。普通の定食料理が恋しくなったんです。」
夫人の調子は案の定、今口に出した思い付きの一言に煽られてそれ者らしい飛躍を帯びて来た。
――じゃ。お祭りに出た女中さんでも引っかけ、世間並の若い衆になりたいとでもおっしゃるの。」
――まさかね。でも今あなたの仰しゃった世間並には何とかして帰り度いのです。この儘じゃ全く僕は粋な片輪者ですからね。」
新吉のしんみりした物淋しさがあまり自然に感じられたので夫人の飛躍の調子がもとの地味にも落ち著けず、中途のところで鋭い鈍い浪を打った。
――何にしても四年間金鎖草の花を分けて眺めさしてあげたあたしの好意に対しても万事打ち開けるものよ。いつでもいゝからね。」
そんなさばけたもの言いをしながら夫人はぐっと神経質になって、新吉が帰ろうと立上りかけるときに門番がわざ/\此所まで届けて来た日本からの手紙を見ると、差出人は誰だかとくどく訊いた。新吉はそれが国元の妻からのものだと、はっきり答えた。
新吉は部屋へ帰ると畳込みになって昼はソファの代りをする隅のベッドの上被いのアラビヤ模様の中へ仰向けにごろりと寝た。ベッシェール夫人のところで火をつけた二本目の煙草を挟んだ左の手に右の手を手伝わせて妻からの手紙の封筒を切った。