Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
意外という字が、若松屋の顔に、大きく書かれた。
「良人? 良人が、あったのか」
「良人は、わたくしがいい着物を着ているのを見るとこのうえなく機嫌がよかったのでございます。わたくしのお金で買いさえすれば――」
「そりゃ、そうだろう。その、美しいお前が、いい着物を着るのだ。一段も二段も、たちまさって見えたことであろうよ。自分の財布が痛まぬ限り、誰しもよろこぶのは必定だ。うふふ、そんな馬鹿ばかしいはなしはよしてくれ。聞きとうもないのだ」
そっけなくいい放った。が、すぐ、ちょっと気をやわらげたようだ。
「その、良人とやらは、武士か」
「はい、いえ、大奥のお坊主組頭をつとめておりましてございます」
「もちろん、故人であろうな」
「は?」
「いや、いま在世してはおらぬのであろうな」
「いえ、生きておりますでございます」
「なに、生きておる?」
若松屋惣七の顔には、純真なおどろきと、不審と、好奇と、何よりも悲痛の色が、一時に、はげしい渦をまいた。
「良人の生きておることを知りながら、妻たるお前はどうしてわたしと、こういうことになったのだ――」
「あなた様を、おたぶらかし申したようなことになりまして、面目次第もござりませぬが、決してそんな――」