Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme

Aozora Bunko

「いいえ、そんなことはございませんが――」

「それならば、遊山かたがた参詣に行け。おれも行くのだ。一日でも二日でも、土地が変われば気もちもあらたまる。わしに、麦田一八郎に、お前に、歌子に、大久保の――」

「でも、旦那様、お高は参られませんのでございます」

「なぜだ」

「なぜでも参られませんのでございます」

「だから、なぜだときいておるのだ」

お高は、しばらくうつむいていた。低い声でいった。

「旅をしては悪いのでございます」

「旅をして悪い――?」

「はい。旅をしては悪いからだなのでございます」

若松屋惣七は、その意味を考えて、うかがうようにお高のほうへ顔を向けた。

「そうか」

と、いった。お高は、膝で歩いて、若松屋惣七のほうへ寄って来ようとした。若松屋惣七が手を出してそれを助けたので、ふたりはすぐ畳のうえの影を一つにして、じっとなった。それきり、両方とも同じことを考えて、黙っていた。

お高を残して、四人で行くことになったけれど、くるはずの紙魚亭主人もまだ来ないし、大久保の奥様の風邪も思ったより長びいているので、龍口寺詣りのはなしは、そのままぐずぐずして、一時立ち消えの形だった。