Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
が、いまは誰も、ひとりの女なぞに構っている者はなかった。ののしりさわぐ声が、群集ぜんたいにどよめいていた。
「ふてえ野郎だ。誰だ」
「和泉屋の用心棒に相違ねえ」
「おれは初め、町内の者かと思った」
「おれもそう思った。屋根を登る恰好が似ていたから、火消しの鉄公だとばっかり思ってた」
「そうよ。鉄っぺにそっくりだったなあ」
「何せ、この仕返しをせにゃならねえ」
「引きずりおろして、なぐり殺そうじゃねえか」
「おい、誰か上がれ、上がれ」
お高は、そういう話し声が、だんだん遠のいてゆくような気がした。ほの白い、幕のようなものにへだてられて、すべてが、夢の中へとけこんでゆく感じだ。無意識に、となりの人の腕をつかんでいた。
腕をつかまれた隣の人は、お高を見かえった。その人は、白い顔をした、二十五、六の武士であった。裕福とみえて、せいの高いからだを、凝った流行の衣裳で包んでいるのが、芝居に出る侍のようであった。帯刀の金の飾りが、ちらちらときらめいていた。
「お女中、御同様とんだ難儀だの」
と、いった。そして、向こう側の、供らしい仲間をかえりみて、笑った。お高は、気がついて、あわてて手を引っこめた。