Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
「わたしも、そう考えていたところです」
磯五がいうと、木場の甚は、あのお高が人妻であると前に聞いたことがあったかどうかと、忙しく考えながら、相槌を打った。
「そうですよ。お高さんが本人であることに違えはねえのです。わっしも、金剛寺の一空さまも、それはよくわかっているのですが、生きた証人がねえことには何も口をきくものがねえのです」
木場の甚は、磯五を慰めるような口調だ。磯五も、お高になり代わって、その証人の捜索を頼むようなことをいって、その日はそれで帰った。
磯五は、堀割りにそって、夕ぐれ近い熟した日光がぽかぽか当たっている深川の町をゆっくり歩きながら、からだ中の血が駈けまわるような気がした。あのお高が、とほうもない財産のあと取りになろうとしている、それは、この陽の光のように確かな事実なのだ。お高、じぶんの妻のお高は江戸で一、二の女分限者だったのだ。
すると磯五は、お高がもう自分の妻でなくなっていることに気がついて今度は、全身に血が凍るように感じた。あの縁切り状を書くのがもう一日おそければよかったのだ。何とかしなければならない。磯五は、なにかに追い立てられるように、せかせか歩き出していた。