Japanische Klassiker mit Furigana
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まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
Lesen Sie 幻の彼方 (まぼろしのかなた) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.763 Zeichen · 84 Bildschirme
順造はそれを暫く眺めていたが、やがてまた足音をぬすんで自分の室に戻っていった。そしてじっと腕を組んで坐った。
俺は一体どうしようというのか。何を求めていたのか。
昔からのことが、順一が秋子の腹に宿ってからのことが、影絵のような静けさで、彼の頭に映ってきた。
そしてその夜順造は、二度も三度も竜子と順一との寝顔を覗きに行った。肉の豊かな頬辺をぐったりと枕につけ、大きな束髪の後れ毛をねっとりと頸筋に絡まして、横向きに片腕を長く差伸してる竜子の懐に、順一はその腕を枕に、仰向きになって、両手を肩のあたりにかついで、無心に眠り続けていた。二人とも殆んど息をしてないかのように、安らかにぐっすり眠っていた。順造はそっと寄っていって、順一の円っこい凸額に一寸手をやってみた。ふうわりした温かさがあった。彼が手を引込めるとたんに、何を感じてか左の頬に軽く笑窪をよせて、口を少し動かしかけたが、そのまままた静かに眠ってしまった。死のように静かな、而も温い眠りだった。
何という静かな眠りだろう! そして此処にも……。
順造は悪夢からでも醒めたような心地になって、自分でも喫驚して、本箱の鍵を開いて、中から秋子の骨壺を取出して胸に抱いた。