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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひかげのまち

幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選

松本 泰

Lesen Sie 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) von 松本 泰 (まつもとたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.797 Zeichen · 107 Bildschirme

Aozora Bunko

昨日は日が暮れると、じきにお臥寝になってしまいましたよ」

婆さんは私が夢でも見たのだろうというような顔付をして、卓子の上へ食事をおくと、さっさと部屋を出て去った。

どう考えてもこの婆さんは単なる普通の雇人ではなかった。私はこの家へ来て以来、幾度となくこの老婦人と顔を合せたが、老婦人と主人のガスケル氏が話をしているのを一度だって見掛けた事はなかった。それでいて婆さんはいつも老主人の意志を私に伝えている。その日も食事を済してから主人の病気を見舞いに行こうとすると、

「旦那様は大分およろしいようですがね。ご用があったら、お呼びをするから、貴殿は御自分の御用をなさるようにとそう仰有っていらっしゃいました」婆さんは階段の下で、またガスケル氏の言葉を伝えた。

「裏の庭木戸が、昨朝も今朝も開いていたようですが、差支えないのですか」いくらか気掛りだったので次手に訊いて見た。婆さんは鳥渡喫驚したように、まじまじ私の顔を視守っていたが、

「そうでしたか、私は少しも気がつきませんでしたよ。錠が破損れたままで、まだ修繕もせずに抛ってあるんですよ。尤もあんなところが開いていたって格別の事はありません」