Japanische Klassiker mit Furigana
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まぼろしのたて
幻影の盾
Lesen Sie 幻影の盾 (まぼろしのたて) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.372 Zeichen · 45 Bildschirme
ウィリアムが日毎夜毎に繰り返す心の物語りはこの盾と浅からぬ因果の覊絆で結び付けられている。いざという時この盾を執って……望はこれである。心の奥に何者かほのめいて消え難き前世の名残の如きを、白日の下に引き出して明ら様に見極むるはこの盾の力である。いずくより吹くとも知らぬ業障の風の、隙多き胸に洩れて目に見えぬ波の、立ちては崩れ、崩れては立つを浪なき昔、風吹かぬ昔に返すはこの盾の力である。この盾だにあらばとウィリアムは盾の懸かれる壁を仰ぐ。天地人を呪うべき夜叉の姿も、彼が眼には画ける天女の微かに笑を帯べるが如く思わるる。時にはわが思う人の肖像ではなきかと疑う折さえある。只抜け出して語らぬが残念である。
思う人! ウィリアムが思う人はここには居らぬ。小山を三つ越えて大河を一つ渉りて二十哩先の夜鴉の城に居る。夜鴉の城とは名からして不吉であると、ウィリアムは時々考える事がある。然しその夜鴉の城へ、彼は小児の時度々遊びに行った事がある。小児の時のみではない成人してからも始終訪問れた。クララの居る所なら海の底でも行かずにはいられぬ。彼はつい近頃まで夜鴉の城へ行っては終日クララと語り暮したのである。