Japanische Klassiker mit Furigana
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
Lesen Sie 影男 (かげおとこ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.133 Zeichen · 310 Bildschirme
もし、かれが頭の真上を見上げたならば、そこには丸い大きな笠のようなものが、あるいは屋根のようなものが岩上三メートルほどの空中にぶらさがっているのを知り、たちまちこの魔法の秘密を悟ったであろう。その丸屋根のようなものは、いったいどこからさがっていたのか。まさか空中に漂っていたのではあるまい。そこにこの目くらましのいっさいの秘密があった。
影男ほどの知恵者が、これに気のつかぬはずはない。しかし、とっさには、そこまで考える余裕がなかった。地底の洞窟が、たちまちにして際涯のない大海原に一変した不可思議に、ただあきれ果てているばかりであった。
そのとき、かれのすぐ目の前の海中に、不思議な現象が起こった。
その個所だけ異様に波だったかと思うと、おそろしく巨大な魚類の尾びれが、白い水しぶきを上げた。その尾びれは五月のぼりのコイほどの大きさがあった。ひればかりでなく、魚類の下半身が波間におどった。銀色に光るうろこの一枚一枚が一寸ほどもあった。
いや、それよりももっと驚くべきことが起こった。その巨大なさかなは、人間の顔を持っていた。ひらりと身をひるがえして、上半身を水面に現わしたとき、その上半身は、まばゆいばかり美しい人間の女性であった。