Japanische Klassiker mit Furigana
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
Lesen Sie 影男 (かげおとこ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.133 Zeichen · 310 Bildschirme
巨大な桃色の虫取りスミレとなった。獲物を包むヒトデの姿となった。
虫取りスミレもヒトデも、毒液を出して、獲物を殺したうえ、吸収してしまうのだが、この人花は毒液を分泌するわけではなかった。獲物は身動きもできぬほど、桃色の肉団に包まれているばかりだ。影男の顔は、透明マスクを隔てて、五つの顔の一つに接していた。眼前三寸の近さに、赤いくちびるが白い歯で笑っていた。愛情にうるんだ大きな目が、じっとこちらを見つめていた。十本のはだかの腕は、かれのからだを抱きしめ、十本の桃色の太ももが、かれのからだを絞めつけていた。ムッとする暖かさであった。そして、かれは母の乳ぶさにうとうととまどろむ嬰児の心を味わっていた。
まもなく、かれは、つぼんだ人花の中で、真実の眠りについていた。人花の一つの手が、かれのわきの下のボンベのネジを動かした。そこに何か仕掛けがあって、かれのマスクの中に送られる気体の質が一変し、麻酔の作用をしたのであろう。かれは海底の人肉の花の中で、前後不覚に寝入ってしまった。
かれはそのあいだも、極彩色の甘美なアヘンの夢を見つづけていた。カレイドスコープがガラッ、ガラッと転回して、あらゆる原色の色彩がかれの脳髄をいっぱいにしていた。