Japanische Klassiker mit Furigana
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
Lesen Sie 影男 (かげおとこ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.133 Zeichen · 310 Bildschirme
だが、影男は経験ずみなので、迷わなかった。じっと待っていると、正面の岩がスーッと横に動いてそこにぽっかり通路がひらいた。
ひらいた岩の向こうに、急な上りの階段があった。それを上っていくと、そこに不思議な世界がひらけていた。
三人がはい出した穴は、目の届くかぎり果てしもしらぬ大森林のまんなかであった。
ここは地上ではない。むろん、地底世界のつづきなのだ。地底にこんな大森林があるはずはない。むろん、この世界の経営者の巧みな目くらましにちがいない。このまえには、地底に無限の大洋がひろがっていた。それはパノラマ原理の応用であった。この大森林も、おそらくそれに似た幻術なのであろう。
だが、この森は地上では見ることのできない不思議な森であった。そこの巨樹たちも、いかなる植物学者も目にしたことのない異様の妖樹であった。
そのふたかかえもある太い幹は、白、桃色、またはキツネ色の複雑な曲線におおわれ、それが絶え間なくむくむくとうごめいていた。うごめく樹幹の上には、巨大なシュロの葉のようなものが、空を隠して繁茂していた。
森の中にはなま暖かく甘い芳香が、むせ返るように漂っていた。