Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
まつもの
待つ者
豊島 与志雄
Lesen Sie 待つ者 (まつもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.153 Zeichen · 7 Bildschirme
時がたち、そしてなおいつまでも、食べる人はやって来ない。誰も出て来ない。料理だけがなおじっと待っている。
また、硝子戸に半ばカーテンを引かれた室内で、若い女が静に動いている。奥働きの女中であろうか。押入の襖を開いて、寝床をのべているのだ。柔かな布団、真白なシーツ、恐らくは、枕の覆いも真白な新らしいものであろう。床をのべ終って、行儀のよい女中は、小腰をかがめて押入の襖をしめ、そして出て行った。電灯はなお明るく輝き、カーテンはなお半ば開き、そのままで、誰も姿を見せない。誰があの電灯を薄暗くし、誰があの雨戸をしめ、誰があのカーテンを引くだろうか。それよりも、誰が一体あの臥床に休らうのであろうか。布団は徒らに軽やかで柔く、シーツや枕覆いは徒らに白い。そこに休息の眠りを取るべき人は、どこに行ったのか。いつまで待っても誰も来ない。夜通し、そしてなお幾日も、臥床は待ち通すだろう……。
それが、私の空想なのだ。
こんな下らないことを、人に話したって、ただ一笑に付されるにちがいない。その上、こんなことを考えるのは、人に物を云いたくない時のことである。或る一つのことに思い耽って、精神の明暗の分野がくっきりと分たれ、明るい部分が狭く凝縮してくる。