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Japanische Klassiker mit Furigana

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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

Lesen Sie 復員殺人事件 (ふくいんさつじんじけん) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 96.621 Zeichen · 195 Bildschirme

Aozora Bunko

昭和十七年度の日記帳でございます。自分が戦死の暁に中をあけてみるように、と言い含めまして、包み紙のようなもので、幾重にも、ていねいに、堅く包んで、封印されておりました。この包み紙の表に、マルコ伝第八章二四という謎の一行が、大きく、ハッキリ書いてありました」

「マルコ伝第八章二四……」

巨勢博士は呟いていたが、書棚の片隅から新約聖書をとりだした。彼の書棚は講談落語の類ばかりと思っていたら、聖書なぞというものも、あったのである。

これを開いて頁をくっていた巨勢博士は、その表情がひきしまった。

「お嬢さんは、日記をあけてごらんになりましたか」

「それをあけて、見ておれば、今さら、こんな不安な思いに悩む筈はございません」

そう答えて、しばし力なく茫然たる様子であったが、

「先程も申しあげました通り、遺品の手型はカトリック大辞典にはさんでおきましたが、日記帳の包みは、事重大と思いまして、特に私の机のヒキダシへ隠しておきました。ところが昭和十九年末、空襲の気配も近づきまして、荷物だけ田舎へ疎開という時に、机のヒキダシをしらべますと、この日記帳の包みだけがなくなっておりました」