Japanische Klassiker mit Furigana
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ふっかつさい
復活祭
久生 十蘭
Lesen Sie 復活祭 (ふっかつさい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.018 Zeichen · 23 Bildschirme
小原は、なるほど握手とはこんなふうにするものかと、田舎育ちの少女にも即座に納得がいくような心のこもった仕方で、一二度強く握ると、
「よく来たねえ、たいへんだったろう。なんといったってこの年じゃ」
と、浪花節の裏枯れ声でいった。鶴代は小原の顔をみつめたまま、返事をしなかった。
鶴代は紐育までの汽車の中で、当然、父の話がでるものと期待していたが、母は忘れたのか、とうとうそのことには触れなかった。あとで笑い話になったが、退屈そうな顔で坐りこんでいるバクチウチのなかから、一人だけ立ってきて握手をしてくれた、あの小原という男がつまり父なのだと、固く思いこんでいた時期があった。父でないことがわかってからも、はじめて握手というものをした小原の印象は薄れずにながく心に残っていた。
そのころの小原は、プリンストン大学卒業という触れこみで上品な英語をあやつるふしぎな男だった。いくらか長目な、かたちのいい細面にすんなりと伸びた口髯がよく似あい、プレスのきいたカッタウェーに灰色の山高帽をかぶり、マロッコの杖をかかえて入ってくるところなどは大学教授とでもいいたいような実誼な見かけで、ちょっとした身振りの中にもなにか謎のような美しさがあった。