Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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びしょう

微笑

横光 利一

Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.911 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

郊外電車の改札口で、乗客をほったらかし、鋏をかちかち鳴らしながら同僚を追っ馳け廻している切符きり、と云った青年であった。

「お話をきくと毎日が大変らしいようですね。」

先ずそんなことから梶は云った。栖方は黙ったまま笑った。ぱッと音立てて朝開く花の割れ咲くような笑顔だった。赤児が初めて笑い出す靨のような、消えやすい笑いだ。この少年が博士になったとは、どう思ってみても梶には頷けないことだったが、笑顔に顕れてかき消える瞬間の美しさは、その他の疑いなどどうでも良くなる、真似手のない無邪気な笑顔だった。梶は学問上の彼の苦しみや発明の辛苦の工程など、栖方から訊き出す気持はなくなった。また、そんなことは訊ねても梶には分りそうにも思えなかった。

「お郷里はどちらです。」

「A県です。」

ぱっと笑う。

「僕の家内もそちらには近い方ですよ。」

「どちらです。」と栖方は訊ねた。

T市だと梶が答えると、それではY温泉の松屋を知っているかとまた栖方は訊ねた。知っているばかりではない。その宿屋は梶たち一家が行く度によく泊った宿であった。それを云うと、栖方は、

「あれは小父の家です。」

と云って、またぱッと笑った。