Japanische Klassiker mit Furigana
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びしょう
微笑
豊島 与志雄
Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.995 Zeichen · 43 Bildschirme
そのくせ常に私達の前を避けようとしているらしかった。私達が彼が佇んでる方へ歩いてゆくと、すぐに彼は向うへ歩き出した。私達の一人が誰かに言葉をかける時は、彼は屹度薄暗がりの中にじっとこちらを透し見ていた。それがいつもまともにこちらへ顔を向けないで、横目で睥んでいた。
「あの男は眇かも知れませんぜ。」と私は村瀬に云った。
背の低い肩の四角な男で、平べったい鼻の下に短い口鬚を生やしていた。いつも帽子を目深に被っていたが、額のつまっていることが顔の輪廓で察しられた。その眼が妙に陰険な光りを帯びていた。老年になって次第に零落してゆく者の眼で変に黒ずんだ鋭い光りを放つのがある。そういう眼の光りだった。普通より眼球が飛び出てるようでありながら、その光りは妙に奥深い趣きを持っていた。年齢は一寸見当がつかなかった。三十位かと思うと、四十位に見える時もあった。
私達が電車に乗ると、彼も屹度乗って来た。然しいつも別の車室か、または私達に一番遠い隅っこに腰を下した。一度私達の方へ向けられている彼の視線を捉え得たと思ったことがあったが、いつもは別に私達の方へ注意してる風にも見えなかった。