Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
こころのかわ
心の河
宮本 百合子
Lesen Sie 心の河 (こころのかわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.442 Zeichen · 37 Bildschirme
というだけのものであった。彼女は、自分が、実際母の苦痛を軽めるには、何の足しにもならなかったのを回想した。ただ母にとっては、無意味に近い言葉を繰返す彼女が、自分の娘であると云うところにだけ、確に、心からの当惑や気の毒さを感じられているというところにだけ、彼女の言葉の価値はあったのだ。
母は、殆ど一生、老いて激しい情熱の失せるまで、解決されない苦労を負うて生きた。
彼女の満されなかった若々しい一心さ、理想的な生存を希う、哀切な人としての願望は、皆消極的な悲しみ、煩悶に精力を消耗されて鎮められた。それだのに――さよは、新たな駭きを以て考えた。――彼女の母は、あれほど勇み立って、女性の天国へは保夫が案内でもされるように、華やかに自分等二人を結婚させたではないか!
さよは、殆ど愚に近い矛盾をそこに認めた。が、猶考えて行くうちに、彼女は、母のいとしさにひしひしと迫られた。母は、自身の一生で実現されなかった更に沢山の夢、人の夢、女の夢を、自分にこそ味わせこの世に持たせようと、結婚もさせ、世に送り出しもしたのではなかろうか。母の母が、明治の始め、長い絹房の垂れた插頭花(かんざし)をかざした自分の娘に希い望んだ通りに。