Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれられたるかんじょう

忘れられたる感情

小川 未明

Lesen Sie 忘れられたる感情 (わすれられたるかんじょう) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.458 Zeichen · 3 Bildschirme

Aozora Bunko

曾て、子供の時分には、此の世界をもっと明るく、また赤い色に見たことがあったかも知れない。また、過去の或日に於て、或る時、ある事件に出遇った場合に、自分の心は、いま迄で経験したことのない、また其の後にも経験したことのない、一種の言い現わし難い重苦しい気分によって、占領せられたことがあったであろう。其の刹那、此の人生を、此の世界を、すべてあらゆるものが此の気分に沈んだ眼底には黒い色に見られたことがあったかも知れない。

多くの場合に、出会して、

『君の頭と、僕の頭とが違っている。』とか『僕の見ている人生と、君の見ている人生とは異っている。』とかいうことを聞くたびに、私は、其等の言葉によって現わされた思想について考えさせられる。さながら、是等の言葉は、全く生れながらに頭の違った人間が此の地球の上に幾何となく住んでいるということを思わせるからだ。

涙の光るところ、其の眼に同じい悲しみが宿る。恋の歌を聞くところ、其処に同じい怨みに泣く人があることを知る。こう、考えると私には、たゞ、其等の人々の境遇によって、現在の頭を占領している気分が違っているに留まるものだと思われた。