Japanische Klassiker mit Furigana
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ただなおきょうぎょうじょうき
忠直卿行状記
菊池 寛
Lesen Sie 忠直卿行状記 (ただなおきょうぎょうじょうき) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.602 Zeichen · 47 Bildschirme
今度の出陣の布令が、越前家に達した時も、家老たちは腫れ物に触るように恐る恐る御前にまかり出でて、
「御所様から、大坂表へ御出陣あるよう御懇篤な御依頼の書状が到着いたしました」と、言上した。家老たちは、今までにその幼主の意志を絶対のものにする癖がついていた。
それが、今日は家康の叱責を是非とも忠直卿の耳に入れねばならない。生れて以来、叱られるなどという感情を夢にも経験したことのない主君に対して、大御所の激しい叱責がどんな効果を及ぼすかを、彼らは恟々として考えねばならなかった。
彼らが帰って来たと聞くと、忠直卿はすぐ彼らを呼び出した。
「お祖父様は何と仰せられた。定めし、所労のお言葉をでも賜わったであろう」と、忠直卿は機嫌よく微笑をさえ含んできいた。そうきかれると、家老たちは今さらの如く狼狽した。が、ようやく覚悟の臍を決めたと見えて、その中の一人は恐る恐る、
「いかいお思召し違いにござります。大御所様には、今日越前勢が合戦の手に合わざったを、お怨みにござります」といったまま、色をかえて平伏した。
人から非難され叱責されるという感情を、少しも経験したことのない忠直卿は、その感情に対してなんらの抵抗力も節制力も持っていなかった。