Japanische Klassiker mit Furigana
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いかりのむし
怒りの虫
豊島 与志雄
Lesen Sie 怒りの虫 (いかりのむし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.457 Zeichen · 24 Bildschirme
」
「逢ったっていいじゃありませんか。僕たちのことは、どうせ塚本さんにも知れてる筈です。逢った上で、きっぱり話をつけましょう。」
「いけません。わたしいやです。第一、奥さまをどうなさるつもりですか。」
「誤解しないで下さい。家内とは関係のないことです。ただ、塚本さんに逢って、僕たちのことをはっきりさしておきたいんです。」
≪また、何を言ってるんだ。腹立ちまぎれの出たらめな思いつきに過ぎないじゃないか。果して実行の意志があるか。彼女からそれを言い出されたとすれば、お前はきっぱり断ったに違いない。出たらめを言うな。ばかなことを言い出して、ますます話をこんぐらかすばかりじゃないか。お前はいったいどうしようというんだ。≫
由美子は黙りこんでしまった。それからふいに、彼にキスを求めた。
「分りましたわ、あなたのお気持ち。わたし安心して時期を待ちましょう。」
「時期ですって……。」
「いよいよの時まで、静かに待っておりますわ。」
「よろしい、僕に任せておいて下さい。」
そしてまた、約束のしるしの冷いキスをした。
それだけで、そして酒を飲むだけで、温い情愛は湧いてこなかった。