Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいだすかずかず
思い出すかずかず
宮本 百合子
Lesen Sie 思い出すかずかず (おもいだすかずかず) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.924 Zeichen · 10 Bildschirme
弟を誘ったり、独りでも、よくそこに行っては長い時間を費した。よくは分らないが、二十坪足らずの空地に、円や四角の花床が作られ、菊や、紫蘭、どくだみ、麻、向日葵のようなものが、余り手を入れられずに生えている一隅なのである。
小使部屋を抜けて、石炭殼を敷いた細い細い処を通っても行けたし、教室の方からならば、厠の傍の二枚の硝子戸を開けてもそこに出られた。一方の隅の処は、嶮しい石崖になっていて、晴れた日には遠く指ケ谷の方が目の下に眺められる。杉か何かの生垣で、隣との境が区切られている。ぶらぶらと彼方此方歩き、眺め、自分はよく、ませ過ぎた憂愁の快よさに浸ったものだ。彼方には、皆の、恐らく子供の、領分がある。自分はここで、枯れかけた花を見、ひやひやするこみちを歩き、自分にほか分らない感動に満されている。――当のない憧憬や、恐ろしく感傷的な愛に動かされたりする。そうかと思うと、急に熱心に生垣の隙間から隣を覗き、障子の白い紙に華やかな紅の色を照り栄えながら、奥さんらしい人が縫物をしているのを眺める。ここの隣りに、そんなうちがあるのが不思議に感ぜられる。黙ってひっそりと、静に動いたり、顔をあげたりするのが妙に驚ろかれる。