Japanische Klassiker mit Furigana
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おんがくどけい
性に眼覚める頃
室生 犀星
Lesen Sie 性に眼覚める頃 (おんがくどけい) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.495 Zeichen · 22 Bildschirme
雨の日は妙に人声が重く響くものである。
「お母さん……」
「もう十分も経つとね。」
私はどう言っていいか分らなかったので、気やすめにそう言ったとき、病人はまた突然に、
「雨がふっていて?」
そう私のかおを見つめた。低い、聞えるか聞えないかの程度で、そとは永い雨も終ろうとする微かな雨の音をつづけていた。
「すこし降っていますよ。あすになると晴れるでしょう。」
病人はまた目を閉じてしまった。時計はだんだんネジのゆるむにしたがって、ゆるい絶え絶えな音いろをつづけていた。
又ぽっかりと、病人は目をあけて、低い声でささやいた。
「おじさん。二階へ行って勉強していてください。もういいの……」
大人のように言って微笑んだ。子供も病気をすると大人のような気もちを有つようになるものだと思いながら、
「ご用があったら呼びなさい。関わないから。」
そう言うと「ええ。」と首肯ずいて、目をとじた。二階へあがりかけると、この古い家の梯子段が暗くて、へんな闇の匂いのような湿けたくさみがした。ひとりでも病人がいると、どうしてこんなに陰気になるものだろうと、そこらの壁や板べりなどに、なにか陰気なものがべっとりと食付いているような気がして寂しかった。