Japanische Klassiker mit Furigana
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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 怪しの館 短編 (あやしのやかた) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.915 Zeichen · 165 Bildschirme
……あの人には罪はなかったのだ)
「痛い!」
と松乃は思わず悲鳴をあげた。耳の痛みが烈しくなったからである。
実父の将左衛門から、久しく逢わないから逢いたい、婿殿ともども逢いに来るようにと伝言があった。そこで松乃は良人と一緒に里帰りの旅へ出たのであったが、昨夜、浅貝の旅宿あたりから耳が痛み出し、次第に烈しくなって来た。今は堪えられないほどに痛むのであった。
(片耳を切られた権之介の怨み! それで妾の耳が!)
こんなことも思われた。
(恐ろしい因縁の部屋で、痛む耳の手あてをするとは)
ゾッとするような思いもした。
そっと良人を見た。妻の過去の過失など知らないで、ただただ松乃を愛している内記は、気づかわしそうに妻の顔を見詰め、
「痛むか、困ったのう。この辺には医者はなし……」
と云った。
主屋の方でのけたたましい物音は、いよいよ烈しくなった。
と、渡り廊下をこっちへ走って来る足音がした。
内記は思わず刀を引きつけた。
あわただしく襖をあけて走り込んで来たのは僕の三平であったが、
「大変でございます。お捕り物で! ……昨夜、沼田様のお牢を破りました三国峠の権という大泥棒が……」