Japanische Klassiker mit Furigana
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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 怪しの館 短編 (あやしのやかた) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.915 Zeichen · 165 Bildschirme
斗丈庵へ帰られてから、ご上人様はおっしゃいました。
「今日の昼頃奥の座敷にいると、さも悲しそうな女の声で、ひっきりなしにわしを呼ぶのじゃよ。そこでわしは行ったのじゃよ。夢のような心持ちでのう。……はッと人心地のついた時には、あの祈祷所に坐っていたのじゃよ」
「あのお綱という犬神の娘は、何をご上人様になされましたので?」
「ただわしの手をしっかりと握って、撫でたりさすったりしたばかりじゃよ」
「ご上人様には一度雨戸をあけて、お手を出されたようでございますが?」
「あまり撫でられたりさすられたりしたので、手がどうかなりはしないかと思って、あの娘が階下へ下りて行った隙に、陽にあてて手を見たまでじゃよ」
――考えてみますれば犬神の娘が、犬神の法力でご上人様を、斗丈庵から誘い出したばかりに、斗丈庵で捕吏にとらえられるところを、お助かりなされたのでございます。
でもその後におけるご上人様の、おいたわしいお身の上というものは! 何んと申してよろしいやら、涙あるばかりでございます。
「旅衣夜寒むをいとへ国のため草の枕の露をはらひて」という、望東尼様の惜別の和歌に送られ、平野国臣様に伴なわれ、もちろんわたしもお供をし、吉之助様のご消息の遅いのを案じ、薩摩をさしてご上人様が、福岡の地をご出立なさいましたのは、同じ年の十一月一日で、薩摩