Japanische Klassiker mit Furigana
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かいじんのめ
怪人の眼
田中 貢太郎
Lesen Sie 怪人の眼 (かいじんのめ) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.772 Zeichen · 6 Bildschirme
そして、覘いを定めて火縄を差した。強い音がして弾の命中した手応えがあった。丹治は大きな獲物の落ち来る刹那の光景を想像しながら鶴の方を見た。鶴は平気で長い頸を傾げるようにしていた。丹治は眼をった。
「たしかに手応えがしたぞ、何故落ちないだろう」
鶴は依然として暢気そうに頸を傾げていた。丹治は鬼魅悪くなって来た。朝山を登る時路傍の赤い実のついた茨の中から、猿とも嬰児ともつかない怪しいものが、ちょろちょろと出て来て、一眼じろりと丹治の顔を見た後で、また傍の草の中へ入ってしまった。丹治はそのことを思いだした。
「今日は、朝から、不思議な日じゃ」
丹治はもう山におるのが厭になった。そこから向うの渓へ降りる捷径が岐れている。丹治は銃を引担いでその径の方へ往きかけた。鶴は動かなかった。
「今日はよっぽど悪い日じゃ」
径は直ぐ渓間の方へ低まって往った。丹治は眼を渓の下の方にやろうとした。赤い靄が眼の前を飛ぶような心地がした。渓のむこうも己の立っている周囲も、赤い毛氈を敷いた雛壇のような壇が一面に見えて、その壇の上には内裏雛を初め、囃子、押絵の雛がぎっしり並んでいた。渓の上の方も渓の下の方も、眼に見える限りは一面の雛壇になっていた。