Japanische Klassiker mit Furigana
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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme
お前は野本の家へ行く時に、果して野本の写真の入っているメダルを持って行ったか。
さあ、しっかりしろ。若しも、お前が野本に渡したメダルに、松村か井上の写真が入っていたとしたら、どんな結果になるかよく考えて見よ。お前は恐ろしくはないか。そら、お前は震えているではないか。では、お前は、そのどうにも取り返しのつかぬ錯誤を、今思出したとでも云うのか」
彼はフラフラと立上った。そして、じっとしていられない様に、部屋の入口の方へ歩き出した。丁度其時、出逢頭に女中が一通の封書を手にして彼の書斎へ入って来た。
「旦那様、野本さんから御使いで御座います」
しゃっくりの様なものが北川氏の胸に込み上げて来た。
ある予感が、駄々子の様に、この手紙を読ませまいと、彼を引止めた。併し、いつまでもそうして女中と睨めっくらをしている訳には行かなかった。
彼は遂に意を決したものの様に、手紙を取って開封した。巻紙に書かれた達筆な野本氏の文字が焼きつく様に北川氏の目を射た。
読んで居る内に、物凄い笑いが北川氏の口辺に浮んで来た。その笑いが段々顔中に拡がって行った。
彼は、巻紙を持った両手をスーッと差上げたかと思うと、クルリ、その巻紙で頬冠りをした。