Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
Lesen Sie 恐怖の口笛 (きょうふのくちぶえ) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.713 Zeichen · 122 Bildschirme
「……」
一郎は、呼吸をはずませて、相手の方を睨んだ。ああ、それは何という恐ろしい顔の男であったろう。背丈はあまり高くないが、肩幅の広いガッチリした体躯の持ち主だった。そして黝ずんだ変な洋服を着ていた。その幅広の肩の上には、めりこんだような巨大な首が載っていた。頭髪は蓬のように乱れ、顔の色は赭黒かった。しかしなによりも一郎の魂を奪ったものは、その男の赭顔の半面にチラと見えた恐ろしく大きな痣であった。
「待て――」
一郎は相手を見てとると、勇敢に突進していった。痣のある男はヒラリと身体をかわして逃げだした。
「オイ、待たないか――」
その怪人は、はたして弟四郎を殺した彼の恐るべき吸血鬼であるのかどうかハッキリ分らない。しかし折も折、この夕暗どきに人も通らぬ石垣裏の蕗の葉の下に寝ているとは、たしかに怪しい人物に違いなかった。追いついて、組打ちをやるばかりである。
怪人は物を云わず、ドンドンと逃げだした。その行動の敏いことといったら、どうも人間業とは思えなかった。高い石垣を見上げたと思うと、ヒョイと長い手を伸ばして、バネ仕掛けのように飛び越えた。まるで飛行機が曲芸飛行をしているような有様だった。