Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
Lesen Sie 恐怖の口笛 (きょうふのくちぶえ) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.713 Zeichen · 122 Bildschirme
青年は小径の別れ道のところに立ち停ると吐きだすように呟いた。そして帽子をとり、額の汗を白いハンカチーフで拭った。青年の白皙な、女にしたいほど目鼻だちの整った顔が現れたが、その眉宇の間には、隠しきれない大きな心配ごとのあるのが物語られていた。――彼はさっきから、懸命になって、何ものかを探し求めて歩いていたらしい。
「どうして、こんなに胸騒ぎがするのだろう」
青年は心の落付きをとりかえすためであろうか、ポケットから一本の紙巻煙草をとりだすと口に銜えた。マッチの火がシューッと鳴って、青年の頤のあたりを黄色く照らした。夕闇の色がだんだん濃くなってきたのだった。
いま青年の立っているところは、有名な鶴の噴水のある池のところから、洋風の花壇の裏に抜けてゆく途中にある深い繁みであった。小径の両側には、人間の背よりも高い笹藪がつづいていて、ところどころに小さな丘があり、そこには八手や五月躑躅が密生していて、隠れん坊にはこの上ない場所だったけれど、まるで谷間に下りたような気持のするところだった。――青年は何ともしれぬ恐怖に襲われ、ブルブルッと身を慄わせた。気がつくと、銜えていた紙巻煙草の火が、いつの間にか消えていた。