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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんをかえすはなし

恩を返す話

菊池 寛

Lesen Sie 恩を返す話 (おんをかえすはなし) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.018 Zeichen · 19 Bildschirme

Aozora Bunko

燦然と輝いたと思う途端、甚兵衛は頭上に強いショックを感じて、あっと思う間もなく昏倒した。

「甚兵衛どの、甚兵衛どの」と呼ばれる声に、彼はふと自分に返った。目を開くと、桶側胴の鎧を着た若武者が自分のそばに立っているのを見た。そしてその足元には、十字架を掛けた以前の壮漢が斬られて間もないと見え、ときどき弱い痙攣を血にまみれた全身に起している。

「惣八郎、助太刀を致した」とその若武者はいった。その男は、まぎれもない、同藩の佐原惣八郎であった。甚兵衛は頭を一振り振って、初めて意識の統一を取り返した。彼が壮漢のために、一撃を受けて昏倒したところへ、惣八郎が駆けつけて危急を救ってくれたことが、彼の頭のうちに明瞭に分明した。

彼は惣八郎に対して、命を助けられた感謝の言葉をいわねばならなかった。しかしそれがどうしても口に出なかった。

「良き兜でござるな」と惣八郎は何気なくいって、死骸から例の十字架をはずして、自分の物にしてしまうと、

「さあ、はや参ろう。残っておる者は、われらばかりじゃ」といい捨てたまま、小さい溝を飛び越えて畦道を跡をも見ずに、急いだ。

甚兵衛は、独り取り残されて、深い溜息をもらした。