Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうぞうのちち
恭三の父
加能 作次郎
Lesen Sie 恭三の父 (きょうぞうのちち) von 加能 作次郎 (かのうさくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.742 Zeichen · 20 Bildschirme
それで時々酔に托して婉曲な小言を言うことがあるのであった。それは多くの場合母に対する義理からであった。母は恭三の実母ではない。だからこの場合に於ても実子の浅七がこうして父の足を洗って居るのに、恭三が兄だからとて素知らん顔して居ると思われるが心外だという父の真情からそう言ったのかも知れぬ。父は恭三一人あるために今日までどれ程母に気兼をしたか知れない。恭三はよく之を知って居た。こうして酒に酔って居る時に却て溢れる様に父の真情が出るのを恭三は幾度も経験して居た。或は又酔うて居るのを幸いに二人の息子に足を洗わせて、其所に一種の快味を味おうという単純な考からであるかも知れぬと思った。併し恭三は父が如何に酔っても全く我を忘れることはないと思って居た。他の人にはそう見えても恭三のみには如何してもそう思われなかった。無学無知な一漁夫に過ぎぬけれど酔うた時には何となく感慨の深いことを言う。父としての情は決して単なる溺愛的のものではない。淋しい様な悲しい様な哀れな父の心情が強い言葉の裏にかくれて居る。之れを恭三は能く味い知って居た。そして恐らく之を知って居るものは恭三の外にあるまい。