Japanische Klassiker mit Furigana
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あくのはなたば
悪の花束
久生 十蘭
Lesen Sie 悪の花束 (あくのはなたば) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.888 Zeichen · 48 Bildschirme
シニョレは例によって頑強に突っ張ったが、本物のグランヴィルと対決させられたところで、一言もなく恐れ入ってしまった。兇行の現場に残した革帯は、なにか大仕事をするときの用意に、前もって盗んでおいたものであった。
シニョレの半生は、放浪流転の見事な歴史である。西班牙人を両親にしてアレキサンドリアに生れたが、語学の才能があるので、どこの土地へ行っても、職業に不自由をしなかった。十年ほどの間に、五十七回も職業を変え、最後に巴里へ行ったときは、陶器の欠継ぎをやっていた。古陶器や美術品を上手に修覆するので、好事家に知られ、上流の家庭から注文があった。前々年の暮、ベリション夫人に古セーヴルの修理の依頼を受けていたが、伸び伸びになっていた。あの日の夕方、偶々、修理品をとりに行ったが、女だけが二人で贅沢な暮しをしているのを見、悪心をおこして兇行に及んだのである。
こんな単純無比な事件が、こうも紛糾を重ねたのは、G・Gという頭文字をもつ名の男が、実在非実在を合せ、四人までも事件の渦中で縺れ合うという、「偶然」のなす悪戯のせいだった。ルイのギュイヨーム・グランヴィルが、兇行の日の朝、ホテルから逃げだしたりしなかったら、いやまた、カイロのホテルの支配人が、グランヴィルという名でなかったら、この事件は、これほどにも神秘的な様相を見せ