Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あくそう

悪僧

田中 貢太郎

Lesen Sie 悪僧 (あくそう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.516 Zeichen · 11 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、暑い夏を送って秋になると、夫人に逢いたくなって起ってもいてもいられなくなったので、父母を省すると云う名目をこしらえて某日山をおりた。

山の中程には大きな巌石が屏風を立てたように聳えた処があった。宣揚はそこまでおりて来ると疲労れて苦しくなって来たので、路ぶちの巌に腰をかけて休んでいた。空には白い雲が飛んで荒っぽい秋風が路の下の方の林に音を立てて吹いていた。宣揚は手巾で襟元ににじみ出た汗を拭いながら、今日帰って往く己を夫人がどんな顔をして迎えるだろうと思ってその喜んだ顔を想像していた。黒い瞳と朱い唇が眼の前にあった。と、背後の方でものの気配がして、宣揚が不審して振返ろうとする間もなく、彼の頭は黒い撃痛を感じて横に倒れた。倒れながら彼の顔は血に染まった。太い棒を手にした壮い和尚が意識を失いかけた彼の眼に映った。

黄金の金具を打った轎が町の四辻を南の方へ曲って往った。轎の背後にはお供の少女が歩いていた。それは麗な春の夕方で、夕陽の中に暖かな微風が吹いていた。慕華館で終日日課の弓を引いていた李張と云う武科志願の秀才は、このとき弓と矢を肩にして己の家へ帰っていたが、きれいな轎が来るので見るともなしに眼をあげた。