Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あくいんねんのうらみ

悪因縁の怨

江見 水蔭

Lesen Sie 悪因縁の怨 (あくいんねんのうらみ) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.705 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

「有難い。魚は海も結構だッたが、子持の蟹が有ったら二三バイ頼むぜ」

「好う御座んす。探して来ましょう」

慾に目の眩んだ茶店の嬶さんは、駈出して行った。

「これせえ纏まれア、御主人もお喜び。お玉坊だッて喜び、俺達も甘え汁が吸えるというものだ。我ながら好い智慧を出したものだ」

市助はもう物になった了簡。煎豆をポリポリ噛って待っているところへ、顔色を変えて嬶さんが戻って来た。

「どうしたい」

「大変です」

「何が大変だ」

「死にましたよ」

「お前の老爺が死んだのか」

「なアに、家の老爺はピンピンしていますが、大事なお玉さんが血を吐いて死にましたよ」

「えッお玉坊が死んだ?」

血を吐いて死んだというのは肺病であったかも知れぬ。肺病なら矢張今日では癩病に次いで嫌われるのだが、その頃には一向問題にしていなかった。

「一足違いだッた。その事を聴かしたら病気も快くなって、死なずに出世も出来たろうのに……」

慾は慾として、あわれ薄命なお玉の為に茶店のお嬶は泣いた。市助も泣いた。

海賊の娘は遂に旗本の奥方になり得ずして死んだ。

その墓は、朗羽山長照寺内に建てられた。六浦琴之丞は、一水舎宗匠及び市助と共に、一度墓参に来たが、間もなく又琴之丞も吐血して死んで、六浦の家は断絶して了った。