Japanische Klassiker mit Furigana
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あくむ
悪夢
豊島 与志雄
Lesen Sie 悪夢 (あくむ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.930 Zeichen · 32 Bildschirme
横町の出口につっ立って、一寸あたりを見廻して、私は右手を振上げざま、向うの硝子店の中の大鏡を目標に、力の限り投げつけてやった。続いてすぐに、左手のやや大きな石塊をも、右手に取って投げつけた。石は何処に落ちたか分らなかったが、ぱっと硝子の壊れる気配がして、次にはやや大きく、硝子の破片が四方に乱れ飛ぶ、痛快な響とも光ともつかない擾乱が、静まり返ってる玻璃宮の中に起った。とその瞬間に、番頭がすっくと立上った。馬鹿に背の高い大男で、私の方をまともにじっと睨みつけたようだった。
それだけのことを見て取って、何故にか、私は膝頭がぶるぶる震えるのを覚えた。そして結果をよく見定める隙もなく、つと身を飜して、足を早めて逃げ出した。横町を暫く行って、右に曲りまた左に曲って、出来るだけ跡をくらまそうとした。その時私の気持には、雑多なものが入り乱れて、さっぱりけじめがつかなかった。胸の中に洞穴があいたように、すーっと風が吹き通っていた。頭の中が熱くほてっていた。何かしらしきりに気懸りなものがあった。胎がしっかりと落付いてるのに、足取りが妙に浮わついて乱れていた。どう逃げたら一番安全かと、そんなことを頭の片隅で考えていた。