Japanische Klassiker mit Furigana
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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
Lesen Sie 悪獣篇 (あくじゅうへん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.715 Zeichen · 73 Bildschirme
来たのが口もあけず、咽喉でものを云うように、顔も静と傾いたるまま、
「主もそくさいでめでたいぞいの。」
「お天気模様でござるわや。暑さには喘ぎ、寒さには悩み、のう、時候よければ蛙のように、くらしの蛇に追われるに、この年になるまでも、甘露の日和と聞くけれども、甘い露は飲まぬわよ、ほほほ、」
と薄笑いした、また歯が黒い。
「おいの、さればいの、お互に砂の数ほど苦しみのたねは尽きぬ事いの。やれもやれも、」と言いながら、斜めに立った廂の下、何を覗くか爪立つがごとくにして、しかも肩腰は造りつけたもののよう、動かざること如朽木。
「若い衆の愚痴より年よりの愚痴じゃ、聞く人も煩さかろ、措かっしゃれ、ほほほ。のう、お婆さん。主はさてどこへ何を志して出てござった、山かいの、川かいの。」
「いんにゃの、恐しゅう歯がうずいて、きりきり鑿で抉るようじゃ、と苦しむ者があるによって、私がまじのうて進じょうと、浜への針掘りに出たらばよ、猟師どもの風説を聞かっしゃれ。志す人があって、この川ぞいの三股へ、石地蔵が建つというわいの。」
それを聞いて、フト振向いた少年の顔を、ぎろりと、その銀色の目で流眄にかけたが、取って十八の学生は、何事も考えなかった。