Japanische Klassiker mit Furigana
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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
Lesen Sie 悪獣篇 (あくじゅうへん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.715 Zeichen · 73 Bildschirme
もとより当のない尋ね人。どこへ、と見当はちっとも着かず、ただ足にまかせて、彼方此方、同じ処を四五度も、およそ二三里の路はもう歩行いた。
不祥な言を放つものは、曰く厠から月に浮かれて、浪に誘われたのであろうも知れず、と即ち船を漕ぎ出したのも有るほどで。
死んだは、活きたは、本宅の主人へ電報を、と蜘蛛手に座敷へ散り乱れるのを、騒ぐまい、騒ぐまい。毛色のかわった犬一疋、匂の高い総菜にも、見る目、ぐ鼻の狭い土地がら、俤を夢に見て、山へ百合の花折りに飄然として出かけられたかも料られぬを、狭島の夫人、夜半より、その行方が分らぬなどと、騒ぐまいぞ、各自。心して内分にお捜し申せと、独り押鎮めて制したこの人。
廉平とても、夫人が魚の寄るを見ようでなし、こんな丘へ、よもや、とは思ったけれども、さて、どこ、という目的がないので、船で捜しに出たのに対して、そぞろに雲を攫むのであった。
目の下の浜には、細い木が五六本、ひょろひょろと風に揉まれたままの形で、静まり返って見えたのは、時々潮が満ちて根を洗うので、梢はそれより育たぬならん。ちょうど引潮の海の色は、煙の中に藍を湛えて、或は十畳、二十畳、五畳、三畳、真砂の床に絶えては連なる、平らな岩の、天地の奇しき手に、鉄槌のあとの見ゆるあり、削りかけの鑪の目の立ったるあり。