Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
小心と酔いが、私を狂いまわらせてしまったのだ。タクシイの客引きが、雨傘をさしかけてきてどこまで行くのかとたずねた。とっさに答えていた。「目黒、上目黒だ」小田富子の家は、その二千何番地かにあるのだった。
そのあたりには、私は行ったことがなかった。記憶の中で富子の家の番地は、二千三百か八百か、それとも二千からとんで何番地だったか曖昧模糊としていた。運転手にどなりつけられ向かっ腹をたてた私は、小田という表札だけをたよりに降りしきる雨のなかを歩きだした。マッチをすり、手でかこって苦心しながら表札を見、番地をよむ。マッチはすぐに尽きた。私はあきらめずに人気ない深夜の屋敷町を彷徨した。人が通りかかればきき、灯りのついた家があればそこできくつもりだった。私は溺死体のように全身から滴をたらしながら探しつづけた。雨の中に、ときどき遠い道路をはしる自動車の音がひびいた。
ポケットには二百円と小銭しかなかった。私は、なんの目的で自分がびしょ濡れのまま歩いているのか知らなかった。なにがなんだかわからない、わからなくたっていいんだ、理由なんか。私はそう思っていた。とにかく富子に逢いたいのだ。