Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
ジルバがよかった。
この光景は、予期していなかったのではない、と信二は思った。バンドを招ぶのは、兵士たちに十二時間の休みが出る日であり、その期限が翌朝の六時であることもわかっていた。「することは決まっている、キャバレエがわりにホールで踊って酒をのんで、お目あてのことをゆっくりたのしむのさ、ラストまで残っているのなんて、たいてい一組か二組しきゃいない」と兄はいった。
歓楽が、ひとつの巨大な音響となって空間を充たしていた。熱っぽい騒音と体臭、それに温気。人びとは充分にたのしんでいるように思えた。陰欝や不幸はどこにもなく、活力にみちた肉塊が音楽に洗われつづけている。リズムは彼のなかにあった。だが、信二は快楽を全身に行きわたらせることができなかった。つとめて冷ややかに、彼は、リズムからこぼれ落ちまいとだけ意識していた。
大きらいだ、鈍く光るドラムのペダルをみつめながら、信二は瞼のうえに滴る汗を手で拭った。彼は喘ぎ、凌辱をうけたように自分が泥まみれの憤怒をなにかに叩きつけたがっているのがわかった。醜い、と彼は思った。目の前を踊って行く兵士の一人は、びっしょりと赤い毛の生えた掌で女の乳房をつかんでいた。