Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
本国にかえるのは士官の一部だったらしいが、兵士たちのはしゃぎぶりは異常で、早くステージをあけろという口笛や怒声が、控え室にいてもうるさいほどの始末だった。「えらいこったぞ、今夜は」兄はにやにやした。「だいたい、客が湧いていれば湧いてるほど、ジャズなんてえのはやりいいんだ」
その兄のトランペットが、威勢よく「ドゥイング・ワット・カムス・ナチュラリイ」を吹きはじめる。その曲がテーマだった。幕が上りきる前から、兵士たちは声を合わせてどなっていた。
「……ナッチャーリィ! ナッチャーリィ!」
信二も興奮してきていた。二本のスティックを使いながら、だが習慣のように、彼の目は沸きかえるように踊るさも愉しげな兵士と女たちの向うに、「黒の女」の姿をさがしていた。彼は、まだ、どうにも彼女に近づく機会をみつけられなかった。ただ、彼は茅ヶ崎にくるたび、いつも貯めこんだ一万円近い札束を内ポケットに入れてくることだけは忘れなかった。もし、いざという場合がきたとき、と彼は思っていた。金のないことが、現実に人になにを喪わさせるかを彼は知っているつもりだった。
排気のわるいホールにはほの白く煙草の煙がみち、真冬だというのに汗ばむような熱気が、米人特有の匂いや酒くさい呼吸とまざりあって、だんだんと濃度をましてきていた。