Japanische Klassiker mit Furigana
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じひ
慈悲
岡本 かの子
Lesen Sie 慈悲 (じひ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.125 Zeichen · 5 Bildschirme
主人はもとより慈悲の心で生きて居る人です。しばらくヴァイオリン弾きの乞食姿をあわれと思って見て居りましたが、やがて意を決して硝子扉を開けました。主人はそして、ひたすら恐縮するヴァイオリン弾きを室内へ招じ、暖い喰べものを与え、ストーヴの火をどんどん焚き足して長時間吹雪のなかにさすらってこごえて来た乞食の老爺の体をあたためて遣りました。
翌日、その翌日となり雪は晴れ道もよくなりました。ヴァイオリン弾きの老爺はしきりに主人の邸内から辞してまたさすらいの旅に出ようとしました。しかし、主人はきき入れませんでした。何処までも、自分の邸内にとどめて可哀想な乞食音楽師を安楽に暮らさせ様と心掛けました。それにもかかわらず老爺のヴァイオリン弾きはしきりに辞去したがる。するとなおさら主人は引きとめる。ほとんど強制的にひきとめる。
ある夜、主人はヴァイオリン弾きの老爺が、突然無断で邸内から抜け出し、何処とも知らず、逃げ失せたのを知りました。「ああ、彼は、矢張り空飛ぶ鳥であったか。」こう気がついたのは、主人であったか、読者たる私であったか忘れましたが、とにかく利己主義な慈悲の例証にこの話は役立つものです。