Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よく

慾

豊島 与志雄

Lesen Sie 慾 (よく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.324 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

まだ誰とも云わない先にか。大した色客だな。」

「だってねえ……。それから、誰にしましょう、お馴染は?」

「うん一人でいいんだ。」

村尾は元気なく黙っていた。考えこんでいた。頭の中に夢を一杯つめこんでるような顔付だ。中江が一人で女中相手に冗談口を利いた。二本目の銚子の時に、急いだ足音が廊下に聞えた。千代次だ。障子をあけて、村尾に視線を落すと、安心したようにつかつかとはいってきて、こんばんわと、中江の方に丁寧に挨拶をした。

「随分ねえ、村尾さん。あれっきり……。また身体でもお悪かったの。」

村尾はぎごちなく頬の肉をひきつらしてる。笑ってるのだ。そうした二人の様子を、中江は不思議そうに眺めた。

「なあに、病気なんかするものか。尻が重かっただけさ。それを、どうだい、僕がむりやりに引張ってきたんだ。」

「あらそう。有難いわね。」

「まだ早い。実は、そのくせ、来たくてたまらなかったんだからね。まあ一ついこう。」

千代次はなみなみとうけて、一息に干した。それを中江に返してから、ひょいと考えこんだ。斜視めいた眼が宙に据って、頬の血色の乏しさと相まって、一寸人の気を惹く。頽廃の一歩前の美しさだ。