Japanische Klassiker mit Furigana
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つきもの
憑きもの
豊島 与志雄
Lesen Sie 憑きもの (つきもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.983 Zeichen · 27 Bildschirme
あたしの眼を見て、と言うことがある。それだけが唯一の要求だ。さすがに大きくは眼を開けず、薄目をあけて彼女の眼に見入るのだが、その視線を彼女の眼は呑みこみ、ぼーとした夜燈の薄明りの中で、彼女の眼は空洞のようにも思える。その空洞に柔かな白いものが一杯つまり、黒目が液体となってとろけ、瞳孔は拡大したままで、私の方に覆いかぶさってくる。物を見てる眼ではない。かぶさってきて、膏薬のようにひたりとくっつき、相手の息の根を塞いでしまう眼だ。
その眼を、私はいつも自分の肌に感じた。
秋子は一人になるのを嫌った。外に出歩くのを好まず、随って私も宿の室に引籠っていなければならない。高原の風物も、初夏の中空に立ち昇る浅間の噴煙も、彼女の興味をあまり引かないらしい。私は寝ころんで文庫本を読み、彼女はトランプの独り占いなどをやる。何のためにこんな処まで来たのだか分らない。酒を飲み、飯を食い、湯にはいるだけのことだ。話の種もあまりない。二人くっついていて、そして……情死を躊躇してる男女のようにも見えるだろう。
宿のわきに、ささやかな渓流がある。私は浴衣と丹前の姿でぶらりと脱け出す。