Japanische Klassiker mit Furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme
の著者であり文学博士である上田敏は指環のはまった繊細な手で、ようかんをつまんで無名の私にすすめ、私は文学博士ともあろう人がえらい親切をするものだと感銘した。その上田敏は『朱欒』の私の詩を読んだといってくれ、意外な光栄を感じた。帰りの梯子段でお下げの令嬢をちらと見たが、それだけでも上田敏訪問は私には幸福だった。えらい人を訪ねたのはこれが初めてであった。
白秋はよく引っ越す人である。私なぞにその都度転居通知なぞが来るはずはない、彼の引越し先につぎつぎと現われ、一年に二、三度は訪ねた。部屋は何時でもきちんとかたづき、机の上には原稿紙でない上質の洋紙が重ねられ、それに詩の下書きがほどこされて、さらにそれを原稿に書きなおしていたのかも分らぬ。冗談もいわなければ砕けた話もしない、それで大家振っている気障なところはなく、手元に引き寄せられて話は熱心にするが、それ以上に女の話などするとか、私自身の生活を聴き取ってくれるとか、そういう一さいのうるさい話はしなかった。詩の話、雑誌の話、木下杢太郎の話、吉井勇の話、そんなふうなことで話はすぐ絶えてしまって、私はきゅうくつになり、長居はしないで何時も早々に退去した。