Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひ
或る日
宮本 百合子
Lesen Sie 或る日 (あるひ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.119 Zeichen · 21 Bildschirme
「国は何処?」
彼女は、優しく前髪を傾けて答えた。
「越後でございます」
「東京には、其じゃあ、親類でもあるの?」
娘は、唇をすぼめ、悩ましそうに一寸肩をゆすった。
「――親戚はございませんですが……」
黒目がちの瞳で顔をじっと見られ、さほ子は娘の境遇を忽ち推察した。
「じゃあ、友達のところにいるの?」
「――はあ」
給料のことも簡単に定ると、彼女は娘を待たせて良人のところに行った。
彼女は亢奮した顔で良人に囁いた。
「まるでお嬢様よ。変に可愛いの」
彼は眩ゆいように眼をちらつかせた。
「――働けそうかな」
「大丈夫よ。家の事は子供の時からしているんですって。手は確に働いたことがある手だわ。――いいでしょう?」
「さあ……いて見なければ判らないが」
「兎に角暫くでもいいわ。其に、若しこの後誰も来ないと大変だから、ね」
千代は、いると定ると、牛込の宿に行って荷物を取って来た。大きくもない風呂敷包み一つが、美しいその娘の全財産であるらしかった。三畳の小部屋に其を片づけて仕舞うと、彼女は立って台所に来た。
さほ子はメリケン粉をこねながら、千代が、来た時と同じ華やかなメリンス羽織を着ているのを認めた。