Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme
」
そして彼女はヒステリックに笑い出したが、その笑を中途でぷつりと切って、毒々しく光る眼で私の方を睥めた。
「いいえ、あなたばかりじゃない。何もかも有難く思ってるわ。」
「お前はまた、心にあることと反対のことばかりを云ってるね。もうこうなったからには真正直に物を云おうじゃないか。」
「ええ、私は昨日からずっと真正直だったわ。」
「そうも云えるけれど……。」
「反対だとも云えると仰言るの? 私何もあなたに隠しはしなかったわ。あなたこそ……いいえもういいわ。何だっていいわ。よく分ってることだから。」
そして彼女は非常に陰欝な顔付になって、眼の光も消えてしまった。私はぞっとした。
「ねえ、お前は僕を許してくれる?」
「許すも許さないもないわ。」
「そうだ、許すも許さないもないというのは本当だ。この気持でいようじゃないか。そして、どちらかに心が落着くまで待とう。」
彼女は何とも答えなかった。私達は森をぬけて停留場の方へ歩いていった。靄を通した薄赤い朝日の光に照らされてる、彼女の蒼ざめた顔や乱れた髪が、私には驚くほど美しく見えた。
「これからどうする?」と私は低い声で尋ねた。