Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

唇がかさかさに乾き、痙攣的に震える眉の下から、薄黒い暈で縁取られてる眼が異様に輝いていた。殊に私の眼を捉えたものは、臙脂色の襟から覗き出してる頸筋に、紫色のなまなましい痣が二つ三つ見えていて、それが今朝結い立ての髪と病的な対照をなしていることだった。そして私は、窓からさし込んで天井の高い白壁に湛えられてる、薄曇りの昼間の影のない明るみの中では、見るに堪えないようなものを、彼女の全体から嗅ぎ出したのである。

「まあお坐りよ。」と私は眼を外らしながら云った。

彼女は黙って私の正面に坐った。卓子の上に少し萎れかけた菊の花瓶があって、それでやや二人の間が距てられた。その影から私は彼女を見据えていたが、黒目が半ば上眼瞼に隠れて光ってる彼女の眼付に出逢うと、もう我慢が出来なかった。

「お前は……。」

彼女は同じ眼付で後を尋ねかけて来た。

「お前はとうとう……。」

それでもやはり先が云えないでつまっていると、彼女はふいにいきり立った。

「ええ、そうなったわ。それがどうしたの!」

「それでお前は……いいのかい?」

「いいも悪いもないわ。どうせ私みたいな私は……。あんな風にぐれ出したんだから、どうなったって構やしない。