Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるそびょう

或る素描

豊島 与志雄

Lesen Sie 或る素描 (あるそびょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

はっと思った時には、女は何やらがーんと響く声を立てながら、僕に武者振りついて来ようとしている。僕はもう……心が顛倒したというか、女を突き飛しておいて、一散に逃げ出してしまった。変に胸糞の悪くなるような髪油の匂いが、気のせいか、いつまでも鼻についていた。そして何とも云えない情けない惨めな気持になって、明るい大通りを犬のようにうろつき廻ったものだ。その時のことを考えてみると、僕は危険だ、実際危険なんだ。」

陰欝な彼の眼付を、私は暫くぼんやり眺めていた。

「君なんかには、そういう経験はあるまいね。いや恐らく誰にもないことなんだろうが……。」

「そりゃあ、そういう一寸した気持を起すことは、男には誰だってあるかも知れないが、気持の上のことと実行とは……。」

「距離があるというんだろう。ところが僕には、その距離が非常に少いような気がして……全く君が云う通り、反省と自制とが足りないのかも知れない。然し、それが自然だとしたら、どうすればいいんだ。……どうしたらいいんだ。」

荒い髪の毛をもじゃもじゃに乱した、骨立った額の下から、彼は陰欝な眼付で私を覗き込んで来た。私は何かしら冷りとしたものを受けた。