Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あるそびょう
或る素描
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る素描 (あるそびょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme
三月の末の午後二時頃のことだった。春陽がうららかに射してはいたけれど、まだ大気が冷くて木の芽もふくらんでいなかった。それなのに、肺炎だという彼の母親は、障子を開け放した室に寝ていて、彼は縁先の庭に跣足でつっ立っていた。
「やあ、今すぐだから、一寸待っててくれ給え。」
そして彼は、恐らく午前中から初めたらしい庭弄りを、不器用な手先でまたやり出した。私は障子を閉め切り、火鉢に炭をついで湯気を立たせ、母親と少しばかり話をし、それから寝転んで、新聞や雑誌をくり拡げ、時々障子の腰硝子から彼の方を覗いてみた。
庭といっても、七八坪の狭いものだったが、植込や配石など相当に拵えられていた。それを彼は、跣足になり裾をからげ、シャベルや鍬や鋏を持ち出して、やたらにかき廻していた。大きな石を据え直したり、木を植え直したり、それをまた何度もやり直したり、石のまわりの竜髭を取除いてみたり、再び植えつけてみたり、それから庭の隅に穴を掘って、その土で或る部分に土盛りをし、足で丹念に踏み固めたりして、今すぐだというその仕事が、永遠に終りそうもなかった。
仕事の合間には一寸縁側に腰を下して来て、泥の手で煙草を吸いながら、室の中に声をかけた。